2010-08-01から1ヶ月間の記事一覧

「B太は駅前のロッカー」

シーツの海に泳いでいた女が、動きを止め、首をもたげて俺たちを見ていた。肩甲骨辺りまで伸びた髪の毛は少しのたわみもない直毛。眠たげに半分瞼が下ろされた瞳だが、それでも幾分鋭い。一重瞼に翡翠色の瞳を持っており、眉と睫毛は少ないが色濃く、細い中…

「都路社長は案内する」

大手レコード会社の社長に案内されたホテルは、駅前にポツンと佇む、八階建てのビジネスホテルだった。天下の大企業の社長が、こんな裏寂れたホテルに泊まっているなんて誰が思うだろうか。怪しんで、どうしてこんな所にと尋ねると、まぁ、元が貧乏性なもん…

今週のお題 あの人のブログが読みたい!

芸能人というか実在の人物専用でしょうか。 Twitter内でアニメキャラのなりきりなんかも居たりするので、架空の人物のブログみたいなのをやっても良いんじゃないでしょうか。 というか、俺の妹がなんちゃらかんちゃらが、確かやってたような。 ありゃ、他の…

「都路宏太郎は招待する」

いや、俺に携帯電話を渡されても困る。別に今、ミリンちゃんとたいして話たいとも思わないし、わざわざその社長の仲介がなくっても、話そうと思えばいつだってミリンちゃんとは話せるのだ。電話じゃなくて直接会うことだってできる。なにせ、俺とミリンちゃ…

「都路宏太郎は勧誘する」

都路宏太郎。アンタ、そんな成りして男なのかい。B太に名刺を渡すのも忘れて俺は思わず突っ込んでいた。あらやだ、そんなに驚かなくっても良いだろう。確かに生まれた時は男だけれど、今じゃ立派に女の体なんだぜ。なんだそれ、性転換手術を受けたとでも言…

「B太の才能」

俺、やっぱ才能ないんすかね。酔っ払いが見えなくなり、引いていた曲を終えたB太が肩を落として俺に尋ねた。顔は今にも干からびてミイラになってしまいそうな窶れ顔。そんな表情を見せられては、心ない鬼畜でもない限り哀れと思う他ない。ただ、やさしい言…

「B太のロッケンロールナイト」

ちょっと野暮用ができたもんで、また外に出てくる。そうですかと、味噌舐め星人は特に興味もなさげに俺に言った。ちょっと前だったら、なんですかなにしにいくんですか、私も行きます私も連れてってください、なんて言い出すだろうに。なんだかこれはこれで…

「味噌舐め星人の月見」

先輩。あのっ、ちょっと良いっすか。辻から三歩ほど歩いた所で、B太の声が俺の後ろ髪を引いた。何かを決意したようなそんな声。かれこれ数年来の付き合いである後輩のそんな態度を放っておく訳にもいかず、俺は立ち止まった。なんだよ。妙な間が開く。おい…

「B太とのノミニケーション」

先輩。センパイ。ここの板さんとさっきの女の子って、もしかしてデキてるんすか。赤ら顔のB太が口元を手で覆い、小声で俺に尋ねた。わざわざそんな仕草をしなくても、声量を絞れば良いだけだろうに。そうなんじゃないのと、俺はそっけない返事をした。板前…

今週のお題 この色が好き 黒色が好き

黒は人の心を落ち着ける作用があるとかないとか。 落ち着きの無い人間なので、黒色の服を着たがるのでしょう。 なんて、実際はただの厨二病で。 黒色ってクールでカッコいいがこの歳まで続いてしまってるだけです。 夏場は黒Tシャツは暑い。。。

「徳利さんは、よく働く居酒屋スタッフだ」

まぁ、クリスマス当日は頑張りましょう。見知らぬ誰かのロマンチックな夜の為に縁の下の力持ちというのも悪くないよ。去年は、なんでバイトはこの時期休みたがるんだ、バイトのくせにと腐っていた、男の言葉とはとても思えない。恋という奴はこれほどまでに…

「店長、従業員に見せつける」

師走という言葉に相応しく、走っているように日々が過ぎていく。気づけば駅前ロータリーに植えられた大きな木はクリスマスの装飾に飾り、街が不必要に明るくなっている。かく言う俺が働いているコンビニの店内も、赤と白で見事に埋め尽くされてしまっていた…

「味噌舐め星人の忘却」

居ても立っても居られずにドアを開けた。味噌舐め星人がこちらを振り返り、その向こうに人影が見えた。それはまるで俺の夢の中から抜け出てきたような、白髪の全裸の女だった。小ぶりの胸に、青色の乳輪、赤みの感じられない冷たい肌の色に、薄い陰毛、そし…

「塩吹きババアは会いにくる」

スーパーに到着し緑色の籠を腕に通すと、とりあえず俺は生鮮コーナーに赴いて野菜を買い漁った。ここ何日も、緑色をした食べ物を食べていない気がしたのだ。どうせ味噌舐め星人の横槍で、この緑色も味噌の茶色に染められるのだろうということは、想像に難く…

「魔法少女風味ミリンちゃんは惜しげもなく特急を使う」

そうだ先輩、仕事も押してることだし、せっかくっすから、今日は特急で帰りやしょう。もちろん、特急料金は先輩のおごりで。そうですね、確かに時間も押してることだし、急行電車で行くのも面倒なのです。よし、お前の言う通り、特急電車を使うのです。いや…

「魔法少女風味ミリンちゃんは帰宅する」

読んでないんすか、そいじゃ仕方ないっすね、また今度遊びに来る時にでも持ってきてあげるっすよ。あ、そいじゃ一緒に、天も持ってくるっすね。あれも良い作品ですよ、オヌヌメっす、是非読んでくださいっす。いや、別に持ってきていらんから、遊びにきても…

今週のお題 ついつい行きたくなる場所

近場のドブみたいな川なんだけれども、夜中にふらっと行きたくなることがある。 夕涼み目的だったり、考えを纏めたり、まぁ、色々な目的はあるんだけれども。 見ても特にこれといって感慨深い物もないんだけれども。 見て落ち着くって訳でもないんだけれども…

「ビネガーちゃんは曲がりなりにも一応アイドルだ」

ビネガーちゃんの説明はこの寒空の下で程よく電波を受信したおかげか、多少なりともまともな俺には到底理解不能だった。しかしまぁ、彼女が夢の中での出来事を把握していないことは辛うじて分かったので、俺は訥々と彼女に昨晩俺が見た夢の内容を語った。彼…

「ビネガーちゃんは感知しない」

ぶえっくしょん、うえっくしょん、べらぼーめーちくしょう。うーっ、お兄さん、そんな所で本なんか読んでて寒くねえっすか。部屋の中で読めばいいのに。ちゅうかなんで外なんすか。あれっすか電波ちゃんすか。電波ビンビンで、股間のアンテナビコンビコンで…

「佐東匡の『ハングドマン』」

小鳥の囀る音がする。鼻の穴に朝の詰めたい空気が流れ込む。瞼が軽い。 あくびをするのも憚られるような爽快な目覚め。鏡を見れば目元の隈が綺麗さっぱりと消えていそうな予感がした。微塵の眠気も頭の中には残って居らず、体に溜まった疲れも皆無。こんな風…

「魔法少女風味ミリンちゃんのお兄ちゃんは拝金主義だ」

「本当にそうかえ。お前が気づいていないだけで、実は居るかも知れんぞ」 塩吹きババアが囁くように言った。声色から、俺はまた、俺たちをからかうような顔をしているものかと思ったが、見ればその表情は真剣そのものであった。まるで俺を咎めるような鋭い視…

「魔法少女風味ミリンちゃんのお兄ちゃんは卑猥な男だ」

うへぇ、まいったっすね。元々からして密偵専門のアタシにゃ、成仏さすのは荷が重いとは思ってやしたが、こりゃ相当に深刻だ。幽霊を抉らせて妖怪になってらっしゃる。これで霊験あらたかなお札も利かぬとなると、アタシにゃ手の打ちようがないっすよ。フル…

「塩吹きババアは復活する」

白い夢の中で白いワンピースを身にまとい白い髪を靡かせて白い顔に白々しい笑顔を浮かべる。今にも溶けて消えてしまいそうな、雪のように透明な白さに見えれば、あるいは漆黒のコーヒーをまろやかな色に変えるミルクのように濃厚な白にも見える。黒い瞳と薄…

今週のお題 生まれ変わったら人気者になりたい。

なに、二文字に収まるようにとかそういうお題じゃないよねこれ。 人気者っていうか、空気読めるっていうか、人と正しくコミュニケーション取れるというか、人から好かれる行動ができるような人間になるというか。 色んなところで色んな文章書いてきたりとか…

「塩吹きババアは侵入する」

家族かもしれない、か。そう言われると、少し、気分が悪い。しかしだ。家族っていったい誰の事なんだ。親父か、お袋か、ミリンちゃん本人、ということはないだろう。姿から言えば、間違いなくあれは味噌舐め星人だが、彼女が人を呪うような性質でないことは…

「ビネガーちゃんは先輩に取り憑いた生霊を祓いにきた」

いや、その前にだ、人の夢の中にずけずけと入ってきて、いったいお前は何なんだ、何者なんだ、何が目的なんだ。これが夢なのを良い事に、俺は乱暴な口調でビネガーちゃんに迫った。いやいや、夢の中の出来事に何を本気になっているんすか。夢に他人が入って…

「ビネガーちゃんは介入する」

二つの布団に二人の人が入れば窮屈なのは仕方なく、どうにも寝苦しい夜になりそうだと、もう既に隣で寝息を立てている、味噌舐め星人の穏やかな寝顔を見ながら思った。なんと図太い女だろう。隣では赤の他人が俺たちのやりとりを好奇の目で眺めているという…

「ビネガーちゃんは拘束する」

ミリンちゃんは少し考えて、ゆっくりと頷いた。それはよかったっす、社長さん心配してたっすよ。ミリンちゃん先輩はお年頃だから、気持ちに流されて自棄になったりしないかって。その点、アタシはミリンちゃん先輩を信じてましたから、大丈夫っす、猫のよう…

「味噌舐め星人の誤判」

おにぎりと味噌を塗りたくった焼きおにぎりがちゃぶ台の上に並ぶ。いただきマスターアジア東方不敗と、なんとも懐かしいアニメのキャラクターを感謝の言葉の後ろにくっつけて叫ぶと、ビネガーちゃんは三角に握られた白飯にかぶりついた。い、いただき、ま、…

「味噌舐め星人の強請」

大の大人が小生意気な子供に言いくるめられる姿というのは、見ていてあまり愉快な物でもない。ミリンちゃんめ、ビネガーちゃんを上手く調教した物だ。お願ぇしますだお代官様、アタシャもう、今のお仕事くらいしかろくに食いっ扶持を稼げねえろくでなしなん…