2011-02-01から1ヶ月間の記事一覧

「味噌舐め星人の暴虐」

くだらない行為を終えると、俺は冷蔵庫からビールと煙草を取り出し、リビングへと向かった。冷えた缶ビールの冷たい感覚と、煙草の紙ケースの吸い付くような感覚が妙に気持ちいい。ソファーに深く腰掛けると、俺はビールのプルタブを上げると一口飲んで、紙…

今週のお題「心に残る映画」

ジーザス・クライスト・スーパースターでしょうか。 え、これ、映画なの!? って感じで、びっくりしましたよ。 あとは、やっちゃっていいのかな、これ、こういう演出って、って。

「味噌舐め星人の暴力」

起きて、いたん、ですか。眠たげに目を擦る女の姿がリビングの入り口に見えた。ピンク色をした頭の悪そうなパジャマを着た彼女は、美しく黒い短髪を思うままに無造作に乱して、半分も開いていない目をこちらへと向けてきた。彼女の瞳は、常時からこれくらい…

「味噌舐め星人の再開」

俺の頭の上で目覚ましが五月蠅く鐘を打ち鳴らしている。古風な音だ。真新しい一戸建てには不釣り合いな、前世紀的な装置を俺は握りしめると、俺はそれを力いっぱい床に押し付けた。こんな形をしているくせに、スヌーズなんていう鬱陶しい装置を備えている目…

「僕の幸せな幸せな子供時代、そのさんじゅういち」

父との会話を終えた僕は自分の部屋に入った。病気でもないのに二日も学校を休む訳にはいかない。詩瑠は確かに重たい病気だけれども、それは彼女自身の問題であり、僕自身の生活に対する免罪符にはなりはしないのだ。妹が死のうとしているというに、何を馬鹿…

「僕の幸せな幸せな子供時代、そのさんじゅう」

観鈴を両親のベッドに寝かしつけてから、俺は父の携帯に電話をかけた。几帳面な父のことである、病院の中ではきっと電源を切っているだろう。もし、電話がかかるとすれば、もう医者からおおよその話を聞いて、詩瑠との面談も済ました後に違いない。そんな風…

「僕の幸せな幸せな子供時代、そのにじゅうきゅう」

「大丈夫なら、お姉ちゃんのお見舞いに行きたいのです。せっかく病院に来たのです。お姉ちゃんの顔を見てから帰りたいのです」 よほどよく眠れたのだろうか、急に元気になった観鈴は後部座席から飛び起きると、僕の腕をその小さな手で引いた。相変わらず上目…

「僕の幸せな幸せな子供時代、そのにじゅうはち」

父さんと母さんが病院にやってきたのは、僕が詩瑠の見舞いに部屋を訪れてから二時間後の事だった。温かそうな毛皮のコートを着て、顔だけ寒そうに青ざめさせた母さんは、僕を見るなり掴みかかって、詩瑠は大丈夫なの、と、今の今まで放ったらかしにしておい…

「僕の幸せな幸せな子供時代、そのにじゅうはち」

詩瑠の病気は小児癌だった。それも、もっと早く症状に気づいていれば、良くなったかもしれないなんていう、ドラマみたいな台詞のついた、そんな小児癌だった。治療したとしてもよくて余命は半年。もう医者も処置の施しようがないくらいに、詩瑠の体は癌とい…

「僕の幸せな幸せな子供時代、そのにじゅうなな」

救急車を呼んだ。どうやって呼んだかも思い出せないくらい、僕は動転して電話をかけて、家に救急車が到着するまでの間、ただただ、詩瑠の手を握りしめていた。息の荒い詩瑠の顔にはびっしりと汗が染み出して、僕の手を握り返す力は弱弱しい。目も開けず喘ぐ…

今週のお題人生最大のピンチ!

今がそのときです。論文書かなくちゃいけないんですが、ぜんぜんアクセルが入りません。

今日はお休み。

すみません。今日は諸事情により小説の更新はお休みさせていただきます。 日曜日に代わりに更新しますので。

「僕の幸せな幸せな子供時代、そのにじゅうろく」

詩瑠の容態が明らかにおかしかった。さっき点滴を打ったばかりだというのに、元気になったばかりだというのに、一時間もしないうちにこんなに疲弊してしまうだなんて。おかしい、やはりインフルエンザか何かではないのだろうか。いや、インフルエンザならま…

「僕の幸せな幸せな子供時代、そのにじゅうろく」

この頃よく思うのは、もう既にコロ太はコロ太じゃないなという事だ。 最初拾ってきた時には、腹の上で寝かせて湯たんぽ代わりにできた子犬さんは、詩瑠と僕、時々観鈴の愛情を受けてすくすくと育った。早く大きくなれとは植物でないから流石に願わなかったの…

「僕の幸せな幸せな子供時代、そのにじゅうろく」

点滴を打った詩瑠は確かに元気になっていた。いつもと変わらない元気な声色に僕は安心すると、それじゃ帰るかと彼女の手を引いた。詩瑠は悪戯っぽく僕の腕にしがみつくと、ねぇ、お兄ちゃん、もしかして、私が大変な病気にでもなったんじゃないかって、心配…

「僕の幸せな幸せな子供時代、そのにじゅうご」

診察はすぐに終わった。詩瑠の瞳を見て、喉を見て、聴診器で胸と背中から心臓の音を聞いて、先生は、詩瑠の裸を見ないように壁側を向いている僕に、過労からくる熱だね点滴を打てば治るだろう、と、実に分かりやすい病名と処置を告げた。やれやれ、なんだよ…

今週のお題甘酸っぱい思い出

同級生の女の子に片思いしてたんですけど。 その子が明らかに他の男子と仲良くしてて。 あっ、私、男として見られてねえーやーって。 なんか、だんだん思えてきて。 一緒にプレゼン作ったり、共同作業すると、喧嘩になったりして。 そんでもって、友達はその…

「僕の幸せな幸せな子供時代、そのにじゅうよん」

翌朝になっても詩瑠の熱は下がらなかった。高校に休むと連絡を入れて、詩瑠を着替えさせると、彼女を連れて僕はかかりつけの病院に向かった。 六十を越えた白髪の先生が運営するその病院は典型的な町医者で、薬の処方も病院内でやっているような所だった。正…

「僕の幸せな幸せな子供時代、そのにじゅうさん」

詩瑠を部屋へと運び入れてベッドに寝かせると、改めて僕は彼女のおでこに手を当てて熱をみた。詳しい体温はやはり分からなかったが、明らかな温度差を感じる。体温計で熱を測ろう。ついでに風邪薬も下から持ってくるよと、僕は詩瑠の頭を撫でて言った。妹は…

「僕の幸せな幸せな子供時代、そのにじゅうに」

その時、随分と遅れて詩瑠が眠たげに瞼を擦った。小さな手を握りしめて猫の様に顔を洗うと、どうしたのお兄ちゃん、と、間延びした声で僕に尋ねた。よかった、どうやら詩瑠が病気になったのではというのは、僕の気にし過ぎだったらしい。詩瑠は眠たげな眼を…

「僕の幸せな幸せな子供時代、そのにじゅうに」

パソコンの前で事を終えた僕は酷く喉が渇いていた。一度、本物の女性の味を覚えてしまった僕の体は、自分の体を使って慰めるという行為に対し、非常に反応が鈍くなっていた。なので、自慰行為が一時間に及ぶこともしばしばあり、その間水分を出すばかりの僕…

「僕の幸せな幸せな子供時代、そのにじゅうに」

「最近凄いよね、ミーちゃんの人気。今度、ドラマもアニメも飛ばして映画撮るって言ってたし。お姉ちゃんとして、私も鼻が高いよ」 「鼻を高くしてどうするのさ、自分は自分、観鈴は観鈴だろう、詩瑠」 それはそうだけど、けど、それくらい嬉しいのよ、と、…

「僕の幸せな幸せな子供時代、そのにじゅうに」

僕と僕の家族の日常は、彼女の死になんら影響されることなく、いっそ申し訳ないほど幸福に過ぎて行った。僕はあっという間に高校三年生になり、詩瑠はあっという間に中学生になった。舌足らずだった観鈴はすっかりと普通に話せるようになって、益々子役とし…

今週のお題これが私の至福の時

なんの予定もなくのんびりと寝れる日曜日。 日曜日くらいはゆっくり休もうと思ってたのに、最近なんだか忙しくて困ります。。。

「僕の幸せな幸せな子供時代、そのにじゅういち」

それ以降、彼女の姉が僕に何かを語りかけてくることはなかった。僕から彼女に何か特別に聞くこともなく、僕は日記を読み終えるともとあった場所に戻して彼女の部屋を出た。姉がどうして隣の部屋に居る僕の存在を知ることができたのか、その謎が頭を過ったが…

「僕の幸せな幸せな子供時代、そのにじゅう」

彼女の姉が途端に喋らなくなったので、僕は彼女の日記を開いて中を見てみた。そこには、彼女が学校では見せなかった、そして下僕と公には憚りながらも時折垣間見せた少女の様な面でもない、理想的な女の子の日記が書かれていた。甘ったるすぎて胃が持たれそ…

「僕の幸せな幸せな子供時代、そのにじゅう」

それはいっさい偽りのない本当の言葉だった。あるいは、それが偽りだったらどんなに気が楽だったろうかという無情な事実だった。彼女はその日、いつもと変わらない態度で僕と接し、そして、いつもと変わらないように僕達は別れた。ただ少し、口調が寂しげだ…

「僕の幸せな幸せな子供時代、そのじゅうきゅう」

入る時に確認したが、部屋の隣にはもう一つ部屋があった。それは恐らく彼女の姉の部屋だろうと僕は思っていたのだが、何故人が居るのだろうか。彼女の家族は全員が葬儀で忙しく動いているとばかり思っていたのだが。ふと、先ほど焼香を行った時の風景を思い…

「僕の幸せな幸せな子供時代、そのじゅうきゅう」

彼女がどうしてそんな事になったのか、誰も明らかにしようとはしなかった。彼女の家族は冷淡で、家族の誰かが自殺したという事を徹底して認めなかったし、それを自殺だと世間に知らしめないだけの力があった。いつの間にか、学校の柵が壊れていたことになっ…