2010-01-01から1年間の記事一覧

「御園詩瑠の孤独な悲しみ」

俺は妹の顔にそっと手を触れた。病気で、小児癌で、抗がん剤投与で、長い病院生活で、皺だらけの顔、色を失った髪の毛、力なく細く骨ばった腕。 それが俺の妹、御園詩瑠の最後の姿だった。俺が忘れていた、ミリンちゃんのお姉ちゃん。この病院、この病室で死…

「塩吹きババアの呪詛」

「……何を言っているんだお前は。感じるべき違和感だって。それが分からないからお前をここまで連れてきたんじゃないか。なんだよ、お兄ちゃんって。誰の真似のつもりだよ。残念ながら、俺の事をお兄ちゃんなんて言う奴は、一人も居ないぞ。いや、ミリンちゃ…

「塩吹きババアの白昼夢」

エレベーターの扉が左右に開く。蛍光灯に白く照らされた廊下と階段、白い手すりが俺の目の前に現れた。しかし、人の姿はそこにはない。おかしな話じゃないか。エレベーターは確かにこの階を目指して昇ってきた。俺はボタンを操作していないし、塩吹きババア…

「塩吹きババアの奇襲」

せっかく帰って来たというのに、また出かけるのは癪に触ったが、それでも出かけない事には彼女たちの機嫌も直りそうになかったので、俺はしかたなく病室から出るとコンビニへと向かった。再びエレベーターに乗れば、またあの夕闇の少女の事を、思い出す。し…

「魔法少女風味ミリンちゃんとお姉ちゃんさんの共謀」

部屋に帰ると味噌舐め星人とミリンちゃんは、二人して簡易ベッドの上に寝転んで賑やかな音と光を発するテレビを眺めていた。年末の特別番組で、お笑い特集でもやっているのだろう。別段興味のない俺は、彼女たちの視線を遮るように、ベッドとテレビの間を歩…

今週のお題 2010年私の漢字一文字

『基』 かなぁ。 基本的なところを固めるような一年だったような気がします。 小説は相変わらず酷いけれど、休まず書き続ける根性は養えたし。 短編ばかりだけれど小説賞にも応募したし。 Pixivという新しい場所に活動基盤を広げることができた。 何事も基礎…

「醤油呑み星人の直観」

それから店長と醤油呑み星人と他愛もない話をした俺は、そろそろ妹たちも心配している頃だろうと病室を後にした。去り際、扉に手をかけながら、そういえば、今度来るときに何か見舞いに買ってこようか、何が良いと店長に尋ねた。丁度醤油呑み星人はお手洗い…

「店長の浮揚」

店長の気遣いに乗って俺はなんでもない風に話を続けた。あぁ、せっかくだからアンタの居ない間に大幅に店を改装でもしておくよ。ちょっと勘弁してよ、配置が変わったら、物の場所が分からなくて陳列の仕事が大変になるじゃないか。心配しなくても、アンタが…

「店長の病室」

店長が一般病棟に移動して、面会が普通にできるようになってからというもの、醤油呑み星人が俺の病室にやって来ることは無くなった。そんな事をしなくても店長に会えるというのも理由の一つだが、そんなことをする時間があるなら店長の世話をする方が有意義…

「魔法少女風味ミリンちゃんのお兄ちゃんは脱走する」

なるほど、ミリンちゃん、今日は病院にお泊りするつもりなのね。俺の病室で年越しパーティするって言った時から、まさか、もしやとは考えていたけれど、そうかい、そのままパジャマパーティに移行するつもりだったのかい。お兄ちゃんはてっきり、年越し蕎麦…

「魔法少女風味ミリンちゃんはおせちをご所望」

そういえば、年越しそばは食べるとして、お前らおせち料理とかは食べたいのか。物は試しとミリンちゃんに聞いてみると、食べたいのです、と、即答した。おせち料理、もう、何年も食べてないのです。お父さんも、お母さんも、おせち料理食べないから。私は、…

赤が上で緑が下。

勘違いしてたので修正しときまんた。 ついでにアフィリエイトしときまんた。 下のクリックして買ってくれると、アマゾンが儲かるばかりで私には少しのインセンティブなど入りません。 ノルウェイの森 上 (講談社文庫)作者: 村上春樹出版社/メーカー: 講談社…

「夕闇の少女の恐怖」

ノルウェイの森を読みふけるうちにすっかりと日は暮れた。この日に限って、俺は例の夕闇の少女の夢を見る事はなく、穏やかな気持ちで読書を続けることができたのだった。どうにもあの夢は精神衛生上よくない。こと、こんな風に俺が何をするでもなく、暇にか…

今週のお題今年一番のごちそう。

お探しの店舗のページはありませんでした食べログで店舗を探す 親子丼美味しかったです。

「魔法少女風味ミリンちゃんのお兄ちゃんは回復する」

足の傷が完全に塞がり、車椅子を使わず自由に歩けるようになったのは、大晦日の事だった。俺の主治医は、俺の足をなめまわすように見ると、看護婦たちに指図し、そして、随分とよくなった、早ければ今日にでも退院してもらって構わんよと、まるで厄介者を追…

「夕闇の少女との毎日」

その夢は不定期に俺の頭の中で繰り広げられた。夕闇色に街が染まった頃合いで、あるいはとっぷりと闇夜で辺りが塗りたくられた頃合いで、その夢は眠気とともに俺を襲い、まるで現実との区別がつかぬリアリティで繰り広げられた。それは夕闇の少女が俺の元を…

デザインが悪いと言われたので

テンプレートのデザインにちょっと手を加えて作ってみました。どうでしょう。

KAGEROUってどうなんだろ

あらすじがどこぞのまとめサイトに載ってたので読んだけど、ドラマとしての伏線回収(臓器移植と自殺がテーマだとして、最後に脳を移植してたんですよってオチと、他人の体の中で動く心臓の音を聞くっていう、目標みたいなものは達成できてる、またねじまき…

「ミリンちゃんと小説」

暗い部屋の中で俺は目を覚ました。体が妙に火照って、病院服が汗に濡れて重くなっている。そして消えない人肌の感触と、夕闇の少女の舌の感触。悪夢だったのか、それとも現実だったのか、どうにも分からない。仮に、現実だとしても、やはり彼女は幽霊なのか…

「夕闇色と現実の境界」

妹は僕の布団の中に潜り込んできた。そうして、僕の腋と首に手を回して強く上半身を締め付けた。僕の首元に伝わる冷たい肌触り。まるで柔らかい氷にでも触れているようだ。しかし、どこか優しい温かみも感じる。 どうして僕の妹はこんな不思議な感触なのだろ…

「夕闇の少女の再来」

ミリンちゃんが病室を去ってしまってから、俺は暫くあの少女についての考え事をしていた。どれだけ考えても分かりはしないであろう彼女の正体について、真剣に考えていた。幸いなことに、俺たち家族は仲が悪いが、誰かが大病を患うようなことはなかった。お…

「魔法少女風味ミリンちゃんはお兄ちゃんは勝手なことをする」

車椅子からベッドに上がった俺は、また少女について考えていた。 俺達の間に共通して存在するのは既視感だった。しかし、その既視感の対象は、俺は少女に対してであったし、ミリンちゃんは病室に対してだった。少女はそこはかとなく、ミリンちゃんに似ていた…

今週のお題 クリスマスプレゼントに欲しいもの

学位と小説の読者と健康とお金。 彼女とかも欲しいけど贅沢は言っちゃ駄目だ。

「魔法少女風味ミリンちゃんはデジャビュを感じる」

なんだかやりきれない雰囲気を抱えたまま俺たちはその部屋を後にした。俺の妹、倒れていた俺の発見者であるミリンちゃん等は、あからさまに納得いかないという表情を作っていた。実際に塩吹きババアを見たことのない彼女に、今回の一件を超常現象の一言で片…

「塩吹きババアは嘲笑う」

白い頭というのには様々な意味があった。彼の頭髪が老人のように白かったという事もある。彼の肌が病的に白かったという事もある。まるで全ての生気を失ったかのように力なくしなだれる男の子。生命力に溢れている年相応の少年らしい面影は、彼の中には存在…

「夕闇色の少女の幻想」

何をしてた、と、言われても、別に、俺はその病室にいる少女と話していただけだが。いや、待て、誰も居ないと、初老の看護婦は言わなかったか。誰も居ないというのはどういうことだ。その病室には、あの日俺が会った夕闇色がよく似合う少女が、入院している…

「味噌舐め星人の惰眠」

味噌舐め星人は上の階に居た。店長が居る集中治療室のある階だ。 俺とミリンちゃん、そして親切な若い看護婦は、すぐにエレベータへと向かって上の階へと移動する。俺たちが階にたどり着くと、さっそくエレベータの前で初老の看護婦が出迎えてくれた。きたね…

「味噌舐め星人の名前」

台車を押してナースセンターへと歩き始める看護婦さん。前方向へと回転する車いすの車輪。そして俺の背中で起きる残念そうなため息。 何を言ってるですかお兄ちゃん、お姉ちゃんさんの名前を聞かれてるのに何を言ってるんですか。いや、それは分かっているの…

感覚で文章打つとこんな事になる。

看護婦が病院でガーゼやらなんやら載せて押してる奴ってなにさと思い調べた。 手押し車 : http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%89%8B%E6%8A%BC%E3%81%97%E8%BB%8A リアカー : http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%A4%E3%82%AB%E3%83%BC 台車 : ht…

「味噌舐め星人の放浪」

居ないのですね、お姉ちゃんさん。どこに行ったのでしょうか。さぁな、もしかすると、入れ違いになったのかもしれないな。とは言いつつ、味噌舐め星人の不在に少なからず動揺している俺が居た。どうしたことだろうか、一時間も帰って来なかった事からして何…