KAGEROUってどうなんだろ


 あらすじがどこぞのまとめサイトに載ってたので読んだけど、ドラマとしての伏線回収(臓器移植と自殺がテーマだとして、最後に脳を移植してたんですよってオチと、他人の体の中で動く心臓の音を聞くっていう、目標みたいなものは達成できてる、またねじまき式の心臓で、自殺に対しての主人公の変化なんかも表現してる。物語のギミックとしてはかなりラノベ的な部分を脱した演出だと思うけどね)はしっかりとできてるわけで。あとは、物語の考証、ディティールの部分に問題があるってことなんだろうか。うーん、やっぱ読んでみない事にはさっぱりだね。まぁ、さして読みたいかと言うと、読みたくもない訳なんですけど。たぶんね、読んだら読んだで、読んだ人にしてみれば普通に面白い出来になってるんだとは思うんだろうけど、前評判でハードル上げすぎて、本来読まない層だとか目の肥えてる層を呼び込んだことがマーケット戦略的には失敗だったのかも。面白いという評判を聞いてやってきた人たちほど、危うい存在はないと思うよ。Wikipediaノルウェイの森の項にある、村上春樹のヒットした時の感想みたいなものだと思う。一日そこいらで大ヒットというのも鼻につくし、本当に伸ばしたいならもう少し穏便な売り方をするべきだったんじゃないのかな。とりあえず、うちの学校の図書館に入ったら読んでみるっす。


 そう、大傑作ね。みなさん大傑作を水嶋ヒロに求めるのはおかしいんですよ。貴方、今まで自分が大傑作だと思う作品にどれだけ出会ったことがあるんですか。特に小説大好きな貴方。貴方は、大傑作だと思った小説をどれだけ知っている。そして、それをあなた以外の誰かに薦めて、「ごめん、僕はあまり面白くなかった」と言われた経験はないんですかね。所詮、小説も漫画も、当人の好き嫌いで評価なんて変わるものだし、世間的には評価が高くなくても個人的に好きな小説なんて個々人にあるわけじゃないですか。だいたい芥川賞を取った小説からして、だから何と言うスタンス、とったから読んでみるかという人間に、そんな作品の質など分かるわけがないんじゃないの。好き嫌いは別としてね。俺はいまだにノルウェイの森がなんであんなに支持されてるのか理解できないけど、読んでよかったとは思ってるし、面白かったとも思ってるよ。そんなもんでしょ。結局、小説の本質である内容の素晴らしさなんてのは、計りようがなくって(権威によって箔をつけることはできるが)、ステータスとして意味をなす物は純粋な利益という商品価値しかないわけだ。商品として、この作品は売れたのだから、それだけで作家として水嶋ヒロは成功なんですよ。なのでまぁ、水嶋ヒロをしごくまっとうに叩くなら、二作目以降がてんで書けない、もしくは書いてもまったく売れなくなって、商品としての価値が無い作家になってしまった、という所を叩かないと、なんも意味がないんじゃないでしょうか。