「砂糖女史の手管」


 戸惑いに満ちた砂糖女史の視線が、俺の股間に落ちていた。酒の力に溺れて、あがきながらも、彼女は俺の股間に慄然と聳える男性の象徴に対し、畏怖の念を覚えるのを忘れはしなかった。彼女の喉が鳴る。彼女を見上げる体勢の俺には、その喉をねばっこい唾液が流れていくのが分かった。
 何も言わずに、砂糖女史は俺のそれにそっと手を這わした。塩吹きババアにされたときと同じで、彼女の手は夜風にさらされて冷たくなっていたが、鼓動を載せて体を回る血が、微かな人の温かさを感じさせる。その爪先が俺の竿の鎌口を擽ったく擦り、しなやかな指先と手の平が筒のように俺の分身を拘束した。指と指の境界が小さな溝となり、弁のような内部構造を持つその主管は、そうして軽く包まれただけで、熱く汚れた体液を吐き出したくなる快楽を俺に与えた。彼女に触れられたことで硬度の増したそれは、彼女の拘束に抗うようにしてその手の中で起立し、膨張し、脈打ち、暴れ回った。
 そっと、砂糖女史の手が緩やかに動いた。緊張に手が震えているのと勘違いするほどゆっくりと、あるいは本当にそうだったのか。そうして彼女に優しく擦られた俺の男性器は、歓喜に打ち震えていっそう激しく彼女の手の中で踊った。堪らずその充血した上端から先走りを染み出させ、彼女の綿のように柔らかな指先を湿らした。徐々にその振り幅を大きくしていく彼女の手管。やがて、その指と指との隙間へと、俺の獣の部分が吐いた大量の唾液が満ちて、手管は瑞々しさと粘性を持った、艶かしい肉の塊に変わった。
 いい、です、か。濡れた手で俺の体の一部を、嬌声を揚げたくなるほどきつく締め上げながら、砂糖女史は悩ましげに俺に尋ねた。あぁ、と答えてやりたかったが、彼女のその潤った手と違い、水分と共に言葉が枯れてしまった俺の喉は、そんな短い感嘆符を喋ることもできなかった。もし、痛かったら、言ってください。彼女はそう言って、さらに俺のそれを手で締め付けると、これまでよりもいささか乱暴に昇降させた。脳髄と納竿が痺れ、痛む。ふつふつと俺の末端部分に、小袋に溜まりに溜まった、情欲を含ませて熱くなった澱が、これでもかとせり上がってくるのがなんとなく分かった。
 そうして、俺は彼女の手の中に、煮えたぎった白い欲望を吐瀉した。
 彼女の掌中に、今までのよりもいっそう粘質な液体が満ちていく。蜘蛛の糸のように繊維の様な触感。それでいて、まるで水に漬け込んで肥大した湿布のようなゼリー質の触感。俺が吐き出したそれのおかげで、もはや縛めることが不可能となった小さな手を開き、砂糖女史はそれをじっと凝視した。熱っぽい瞳と熱っぽい視線。闇の中に映えたピンク色の唇をすぼめると、彼女はその手の中にあふれている白濁した汚濁に口をつけた。まるで延々と続く砂漠の真中でオアシスを見つけた旅人のように、水を手で掬い飲むようにして、彼女はそれを啜う。苦いのか、途中で何度か顔を顰めながらも、彼女はなんとかそれを飲み干した。熱っぽい視線はさらに熱を増し、息は荒く、闇の中でそれと分かるほど白んでいた。口の端しの白色は俺が放った精液。
 再び、俺の分身が活力を取り戻すのに、そう時間はかからなかった。
 砂糖女史はそれを見て悩ましそうに笑い、再びその手の中に俺を納めた。