「砂糖女史は快楽に抗えない」


 雅の体を俺は思う存分に貪った。彼女の熟れた体は、抱きしめれば柔らかく、噛めばほんのりと甘い。白い彼女の肌に桃色のキスマークと歯形を付けて、時には乱暴に、時には優しく、彼女を扱った俺は、その中に精を三回目の精を放つと、ふぅとため息を吐いて離れた。こいつの体も随分と勝手が分かってきた。どうにも、雅は胸や女性器よりも、うなじや口、背骨といった箇所を刺激されるのが弱かった。特に後ろから突き上げて、その背中をゆっくりとなぞってやると、腰の動きとは違う振動が下半身に伝わり、とても具合がよくなった。また、彼女の穴はとても具合よく締まった。きつくもなければゆるくもなく、包み込むように俺を招き入れては、ゆっくりと真綿で締めるようにしごきあげて、俺を満足させてくれた。いつまでも入れていたくなる。魅惑的な体をしている。これでもう少し、性格が良かったら、な。
 虚ろな目をしてソファーに仰向けになった雅。荒い息遣い、興奮冷めやらぬという感じの彼女の頭に手をかけると、その湿った髪を優しく撫でた。
「止めて、くだ、さい。今更、優しく、されたって、嬉しく、ありません」
「そういうなよ。俺がこういう形でしか、人を愛せないのをお前も良く知っているだろう。それを承知で、俺と一緒に居るんだろう。違うか」
 雅は答えない。俺から視線を逸らすと、まるで拗ねた子供の用に、怒りの形相で涙を流すのだった。泣くなよ、あぁ、もう、面倒くさいな。強引に彼女の顔を引き寄せると、俺はその頬にキスをする。後の残らない弱いキス。こういう風に、俺が彼女にキスすることは滅多にない。例え拗ねた所で、いつもなら放っておくのだが、今日は醤油呑み星人と話したせいだろうか、少し優しい気分になっていた俺は、柄にもなくそんな気障な行動に出たのだ。
 少し驚いた様子で、彼女は目をこちらに向けた。俺の顔を一瞬だけ盗み見て、彼女はまた視線を地面に落とした。どうやら、彼女のご機嫌はこの程度では癒えないらしい。流石に、これ以上は彼女に何かしてやろうという気分にはなれなかった。やれやれ、味噌舐め星人以上に手間のかかる奴だ。
 彼女の為に何かをしてやる気にはなれなくても、自分の為になら行動はする。俺は雅を抱きしめると、先程までとは違って、優しくその肩を抱いてソファに倒れた。温かい抱き枕だ、なんて、強がって思ってみたが、結局の所は、俺もこの長く暗い人生の孤独に疲れているのだろう。嫌がっているようでいて、雅という自分を身も心も受け入れてくる存在を欲していたのだ。
「どうして、止めてって、言ったのに、止めてくれないんですか。こんな、恥ずかしい姿を、見られてしまって。私、もう、生きて行けません」
「そこまで脳みそお花畑じゃねえよ、あいつも。男と女が居たら、必然的にそういう関係になるなんてのは、分かってくれてるさ」
 その味噌舐め星人は、既にどこかに行ってしまっていた。俺の言葉を裏付けるようなものは、どこにも、少しも、ありはしなかった。しかしながら、雅はその言葉で何かを納得したのか、視線こそ俺から背けたままだが、俺の胸に、その頭をゆっくりともたれ掛からせるのだった。
「酷い人です。貴方は。分かってる、そんなの、分かっているのに……」