「味噌舐め星人の襲来」

 朝起きるとそこに味噌舐め星人がいた。俺が寝ている間に、味噌舐め星人は俺の部屋に襲来したらしい。味噌舐め星人は黒くて長い髪をした可愛らしい女の子だったけれど、それはやっぱり地球人ではなかった。なぜなら味噌舐め星人は一心不乱に味噌を舐めていたからだ。あのくそしょっぱい味噌を、まるでアイスクリームでも食べるようにしてしゃもじで味噌をすくうと、彼女はぺろぺろぺろと味噌を舐めた。おいしそうにぺろぺろぺろと舐めた。あまりに美味しそうに舐めるものだから、なんだか俺も味噌が舐めたくなってしまうくらいに、味噌舐め成人は美味しそうに味噌を舐めていた。
 ぺろぺろぺろと舐めながら味噌舐め星人は俺に会釈をした。一度会釈をしたきりで、味噌舐め星人はぺろぺろぺろと味噌を舐めつづけた。俺は味噌舐め星人は人の家の味噌を舐めるほかに害は無いからほうっておくことにした。けれど味噌は味噌舐め星人が舐めているから使えない。しかたないので俺はコーヒーを作って飲むことにした。コーヒーとご飯はやっぱり合わなかった。味噌舐め星人がこちらをみていた。それは味噌汁のようですが、その黒い粉末はもしかして味噌ですか、この星では味噌を粉末にするくらいに科学力が進化しているのですかと聞いてきた。俺は味噌汁星人が人に声をかけるなんて誰にも聞いた事が無かったので少し面食らったが、あぁそうだよ、と大嘘をついてコーヒーの粉を一杯スプーンにすくって彼女に差し出した。
 彼女はまったく疑う素振りも無く、それをパクリと口にくわえた。味噌でべったり汚れた唇でそれを包み込んだ。味噌で真っ茶色になった舌先でそっとそれを絡めとった。なんですかこれは、これは味噌ではありません、とても苦いです。咳き込みながら彼女はそんな間の抜けた事を言ったので、俺は大笑いした。大笑いしていると彼女が真剣な表情で銃を突きつけてきた。ビームが出そうな銃だ。彼女はえらい剣幕で俺に言った。どうしてくれるんですか、味噌舐め星人は味噌以外をなめると死んでしまうんですよ、どうしてくれるんですか死んだらどうしてくれるんですか、責任を取ってくれるんですか、責任を取ってください。俺は責任を取るのなんて真っ平だったから、死んだら死んでるんだから責任なんてとる必要ないじゃん、と味噌舐め星人にいった。味噌舐め星人は俺の言っている事が良く分からないようだった。良く分からない味噌舐め星人は少し考えてから、今は生きてます、生きていますから責任をとってくださいと俺に言った。やれやれ、確かに味噌舐め星人は今生きているから、俺は責任を取らなければいけないのかもしれない。
 それから味噌舐め星人は俺に無茶な要求をしてきた。毎日朝昼夜の三食に味噌を一パック舐めさせろというのだ。俺にはそんな財力は無いというと、なんて甲斐性の無い男だと馬鹿にされた。それくらい自分で稼げよというと、なんて甲斐性の無い男だとまた馬鹿にされた。いい加減頭にきたので味噌舐め星人を犯してやろうと押し倒したら彼女は泣いて懇願してきた。処女は愛する人に捧げたいのだとかふざけた事を言う。じゃぁお前が舐めた味噌を返せよというと、味噌舐め星人は悲しそうに俯いた。その顔があんまり惨めで味噌舐め星人を開放してやると、彼女は泣きながらまた味噌を舐め始めた。