佐藤友哉『青酸クリームソーダ』と『フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人』 読了


 感想:ヴァンパイアで件って、そりゃ無いだろ!!


 俺の怒りは爆発寸前! 億光年も軽やかに飛ぶ、宇宙戦士だ俺はスピールバーン!
 ふぅ、あまりのオチに、スピルバンを熱唱してしまった。ふと思ったんだが、メタルヒーロー物のヒロインを妹にしてだね、おにいちゃん、お兄ちゃんの太いレーザーブレードを早く私にちょなんでもありません!!
 ふぅ、いけないいけない、あまりの出来事にあぁおにいちゃん病にかかってしまうところだった。妹なんてどうでもいい、妹なんてどうでもいい。血が繋がっていなくて、華奢で可愛らしくて、子犬のように俺の周りにまとわりついては、「おにいちゃん、ねぇ、お兄ちゃん、話きいてる」って感じにふてくされるような、そんな妹が突然出来るなんてありえないんだ! 七年待ったんだ!! いいかげんあきらめもするさ!!(逆算すると発症は十五歳)
 ふぅ、落ち着け、俺。いったいさっきから何回賢者モードになっているんだ。ふぅ、やれやれ。ふぅ。


 まぁ、そんな訳でですね。あんまりミステリー読まんのでこのオチが果たしてミステリー小説好きに受け入れられるものだったのかどうかは正直分からんのですが、この落ちには納得がちょっといかない。ひっぱるだけひっぱっといてこれかよ、と。まぁ、ゴシップの真相としては最もセンセーショナルな落ちですが。うぅむ、だから俺はこの人の話が好きなんだよなぁ。いかにも下世話な感じで。いや、よく考えると凄くよく練りこまれているのかもしれない。のかもしれんがどうなんだろう、正直切り裂きジャックの正体が彼女だったからって、へ、だから? って感じだし。そも、幼馴染があぁして主人公に絡んでくる必要性もまったく分からないし、そもそもそれぞれの行動がまったく独立して存在していて、一個のストーリーの中でまったく絡まってないように思える。あ、これはフリッカーの感想ね。そう、ピタゴラスイッチピタゴラ装置を三個連続で見せられたようなそんな感覚。だいたい、お兄ちゃんが活躍するのも終盤になってからだ……。あぁもう、そういうあら捜しはよそう。それでもこの作品は凄く楽しめたのだから。
 何が楽しかったって。そりゃまぁ、NTR属性をそそる設定だとか、性的なステータスですね。うん、絶対この人エロゲのシナリオとか書いてる。間違いない。いたるところにそういう感情をくすぐるエッセンスが盛り込まれている。これでなんにもしないなんて、ありえるのか。ぜったい削った部分ってエロシーンだろ。エロシーン書いてただろ。濡れ場だろ。絶対エロゲのシナリオライターだ、間違いない、長井秀和
 精神的な部分に関しての言及は、青酸クリームの方が強いかな。「ちくしょう、俺の物語なのに」は、両方のテーマで好きだったけれど。世界に対して何の行使力も持たない自分に対する絶望感を如実に表してると思う。そういうのってひたすら隠して、本当に安心できる状態になってからしか行使できないんだろうかねえ。しっかしまぁ、俺はこれからどうしてその力を手に入れていけばいいんだろうか。ううむ、まず間違いなく、同級生がうえの連中になっちまうわけだからなぁ。いや、まぁいいか。世の中には問題を抱えてる人間のほうが多いんだ、そういう人間と足並み揃えるにはこれくらいでちょうどいいのかもしれん。おぉっと、話がずれた。とにかく、うーん、そうだなぁ、あまり内面にぐっと来るような描写は今思うとフリッカーの方には無かったかなぁ。あぁ、自分で壊してしまいたくなるってのは分かるような気もしないでもなかったけれど。けれど、あそこの表現もなんというか説明ぶそ、だからそういうのはいいだろうって言ってるんだよ。

 とにかく、この人の世界観みたいなものにどっぷりはまれて面白かったです。ドラマティックな展開が好きな人はどうにょ? って感じですね。