「味噌舐め星人の二人羽織」


 昼飯で使った食器をかたずけるとテレビをつけた。お昼のバラエティ番組のテーマ曲が流れて、出演者達のゲームが始まる。もうすぐそこまで迫ったクリスマスに、テレビの中まで染まっており、番組中でコーナーの司会者を担当している芸人は、サンタクロースの格好をしてマイクを握っていた。
 電気ストーブではなかなか温まらない部屋に絶望して、味噌舐め星人は再び王蟲状態になっていた。テレビの前に陣取ってぬくぬくとした表情で微笑んでいる彼女。その布団の後ろの裾から、俺はゆっくりと中に侵入すると、彼女を背中から抱きしめた。わっ、わっ、なにするんですか、お兄さん、なにするんですか。びっくりしましたよ。もうっ、驚かさないでください。もし、心臓飛び出したらどうするんです、おめめも飛び出したらどうするんです。心配しなくても、そんな漫画みたいな事にはならないよ。俺は怒る彼女を膝の上に載せると、肩越しにテレビに視線を向ける。こうして密着した方が温かいだろう。ふてくされる味噌舐め星人の頬を軽く突く。彼女は何も文句を言わずにそっぽを向いた。嫌とも止めてとも言わないのだから、続けさせてもらうとしよう。年末で仕事が忙しく、久しく彼女とこうして触れ合うことの無かった俺は、彼女からエネルギーでも吸いとるように、または、味噌舐め星人成分を補給するような勢いで、その体を強く強く抱きしめた。
 ゲームが終わり、CMが終わり、ゲストを招いてのトークコーナーが始まる。今日のゲストは、俺もよく知らない人だった上に、あまりこういう場所でのトークに慣れていないのか、たどたどしい感じで実に話がつまらなかった。これならまだ、司会者が一人で喋っていた方が面白いんじゃないか。味噌舐め星人の耳の横で大きなあくびをすると、俺は彼女の腹を擽った。あっあっあっ、と、いつもの調子で味噌舐め聖人が反応する。その反応が可愛らしくて、今度は手を横腹に移動して、つま先を素早く動かす。止めてください、お兄さん、擽ったいです、笑っちゃいます、あっ、あっ。止めろと言われて止めるようなら、悪戯なんて最初からしない。熊さんパジャマの裾から指を通すと、俺は今度は肌に直接指先を打ち付けた。やん、やん、お兄さんエッチですよ、そんなのしたらエッチです、あっ、あっ、あっ、あっ。エッチで悪かったなと耳元で囁くと、俺は更に指先の動きを早めてみせた。
 酷いです、あんまりです、止めてって言ったのに、止めてくれないなんてお兄さんは悪魔です、鬼です、鬼畜です。ひんひん。泣き笑いに笑って、疲れてぐったりと敷き布団の上に横になる味噌舐め星人。流石にちょっとやり過ぎたかなと、俺は後頭部を掻いた。むっくりと頬を膨らませて、俺から顔を逸らす味噌舐め星人。その横に寝転がると、俺は意味もなく目を閉じた。
 しかしさ、お前って、相変わらず料理下手だな、いや、まて、一時期たしか上達してたじゃないか。どうしたんだよ、また、いつのまにか下手になって。正直、食器洗うの大変なんだけど。ふと、そんな事が気になって、軽い気持ちで口にした。思い違いでなければ確か彼女は、塩吹きババアに料理を教え込まれて、少しくらいまともな料理ができるようになったはずである。それがまたどうしてここ最近酷くなっているのか、今思えば不思議な話だ。