映画版DMCを見る


 私はDMCに対しては、自分が望む姿と世間が自分に望む姿の差に絶望する物語だと思っているので、今回のその差を認めるという方向性には少し違和感を感じた。と、まぁ、映画版DMCに対する評価はこの一言で充分かもしれない。とどのつまり、この方向性に従って物語りは尽く修正されている。遊園地での出来事しかり、ラストしかり、鋭いお母さんしかり、だ。また結果として、ただのイロモノ映画から、お茶の間でも楽しめるイイハナシにはなった。しかし、原作至上主義(とかいいつつ、1・2巻しか買えていないが)で、あの若者が持つ特有の世界への絶望感みたいな物が好きな私としては、映画の出来栄えは非常に不満――


 なんてことはなかった。いい話、結構じゃないか。


 現状に対して絶望しつづけるというのは、まぁそういうどん底にいる人間からすればある種の共感を感じられるものだ。それはそれで良い。けれどもそこから脱出するっていうテーマもやっぱり大切。人間はいつまでも絶望していちゃいけない、諦めるか、それでも向き合うか、選んで進まなくっちゃいけない。そういう意味で、この映画でのメッセージには非常に好感が持てます。自分が望むものと、他者が望む物の差に対して、大人な決断を下した根岸は素直に格好良いとおもったよ。まぁ、そういう演出だけれどね、いいよ、見事に引っかかってやろう、釣られてやろう。第一、短くて濃いオムニバス的な流を、連綿とした一つの流に変えようとするなら、こういうすっと一本筋の通るオチに帰着するのは仕方ない。漫画の様に、各話にオチを持っていくようなそういうつくりは、映画と言う制限上できはしない――ことはないけれど、難しい物がある、はずだ。いや、私は全然映画の専門家じゃないのだけれど。それでも、この料理の仕方は素直に上手いと思うし、DMCという存在に対する新しい見方(あくまで私の中でだけれども)であり面白いとも思う。
 最終的には、漫画版もこういう方向に話しが行くんじゃないかなぁ。行かんかも知れないけれど。