よーし、パパ頑張って詩とか書いちゃうぞ


 毎日毎日が地獄ですと俺は呟いた
 僕は心のそこからそうだねと俺に同意したのだけれど
 俺はその返事が気に入らなかったのか自殺してしまった


 希望が見えません、希望なんてないんですと私は呟いた
 僕は心のそこからそうだねと私に同意したのだけれど
 私はその返事が気に入らなかったのか引きこもってしまった


 僕は私と俺の言っている事を理解できてるはずだった
 分かるつもりだけど僕は何かを理解できていなかった
 その理解できなかった何かが俺と私を決定的に駄目にした


 それがなんなのかが分からない
 分からないと僕はまた誰かを傷つけてしまう
 それがなんなのか理解できない
 分からないと僕はまだ人間じゃない


 毎日毎日が天国だよと僕は呟いた
 俺はそうかい天国なのかい、それはさぞ気分が良いだろうと
 僕に気持ち良いほどの笑顔で言った


 昨日やりたい事を見つけたんだ、生き甲斐を見つけたんだと僕は呟いた
 私はそれは素晴らしいね、よかったね、おめでとうと
 僕に気持ち良いほどの笑顔で言った


 彼らは僕の言っている事を理解していた
 僕は理解してくれてとても嬉しかったんだ、死んでしまいたいほど嬉しかったんだ
 彼らが僕を理解してくれた事が僕を今ここに存在させてくれている


 なんで彼らは僕のこと理解できたのだろうか
 それが理解できれば僕は誰かを救うことができるかもしれない
 なんで彼らは僕のことを理解できるのだろうか
 それが理解できれば僕はやっと人間になれるような気がする


 伯父さんが僕の頬をぶって言った
 何が必要なのかを考えるんだそれだけでいい
 村上春樹の小説の受け売りだね
 僕が笑うと、伯父さんはもう片方の頬をぶった


 耳を澄ませば風の音が聞こえた
 けれど空気の音は聞こえなかった
 僕は風を感じられるけど、空気を感じられない人間だ
 なんとなく、伯父さんの言いたかった事が分かった気がしたよ
 同時に、僕は一生人間になれないんだと痛感した
 ラヴクラフトの小説に出てくる旧支配者の眷属たちの様に
 僕は人のなりそこね
 ノルウェイの森の主人公の様に
 僕は大人のなりそこね


 僕に足りないそれの名は思いやり
 僕に足りなかったのは幾らかの言葉
 どれだけ探しても見つからない言葉
 けれども人間なら見つけられる言葉
 言葉・言葉・言葉・言葉・無言
 言葉は心、心は態度
 伝えなければならないのは心、心は態度

 
 僕はその時彼らの事を本当に考えていたのだろうか
 ノルウェイの森は流れていないけど、僕は考えた
 僕はその時彼らと同じ感情の淵の上に立っていただろうか
 彼らは僕がその話をしたとき、確かに僕の隣に立っていた
 彼らにあって僕にないもの
 血と肉が足りない
 血と肉が熱を運んでくれる
 僕の体には血と肉がない
 僕の体には熱が伝わらない
 俺と私の熱が僕には伝わらない
 足りていない共鳴感覚、足りていない共振感覚、足りていない共同感覚


 僕はこの世界に存在しながら、存在しないどこかにその存在を委ねて生きている
 そのズレが彼らを僕が救えなかった理由なのかもしれない
 僕と彼らの間にある壁は熱によって溶けてしまわなければいけない
 生きるというのは、人と関わるというのは、壁を熱で溶かすことなのかもしれない


 どうすれば良いのか、やっぱり分からない
 とにかく自分を殺して僕は誰かを生かさなくちゃいけなかった
 それが誰かを救える唯一の方法なのかもしれない
 彼らは同意を求めている訳じゃないし、反対を求めている訳じゃない
 同じだと感じられるエネルギーを僕に求めていたのかもしれないと、今では思う
 それを知った所で人間のできそこないの僕に何ができるのか
 それを今知った所で私と俺を救うことができるというのか


 熱くなれ、夢見た明日を必ずいつか捕まえる


 僕に捕まえられるだろうか、熱を捕まえられるだろうか