「描きたいものなんてないんだ」

 僕はただ文章を描いているのが好きだったし、それに意味を求められる事が大嫌いだった。思いつくままに自分がこれだと思うものを書くことしかできないのだ。僕は自分の感覚に絶対の自信を持っているが、僕は自分の感覚が人の共感を呼び起こすにたるものだという自信は持っていない。僕の中で僕の為に完成された感覚なのだ。だから、あまり僕に高尚な何かを求めないでくれ。僕は別に自分が楽しむために文章を書いている。あるいは手慰み、僕にとって文章を描くと言う事は芸術でもなくただの自慰行為でしかない、それは嫌というほど指摘されたのだけれど、それでも僕は自慰を止めない。止めれない、止めれるはずがない、僕は、僕を守る為に自慰をする。自分を慰めなければ僕はこの世の中で生きていけないくらいにか弱い人間だ。自分の人生に意味があるだなんて微塵たりとも感じられない僕には、享楽的に自分のチンポを握り緊める事でしか自分の位置を確かめられないのだ。もし貴方が何かしらの社会とのつながりの中で、自分という輪郭を見出す事ができるなら、セックスは単なるスポーツか子を得る手段でしかないのだろうけれど、僕たちの様に明日をも知れぬ若き魂は、お互いの輪郭を求めて手探りにその体を触ることでしかお互いを知覚できないのだ。僕たちは誰かから必要とされたかったし、誰かから必要とされているという状態が欲しかった。僕たちは、生きなくてはいけないと許されて初めて生きていく勇気を手に入れることができる。けれども世の中には不幸な事に、つがいのいない人間が居る。親兄弟・親戚その程度しかつながりの持てない僕達。持てないんじゃなく持ちたくない僕たちは、自分の体を手探りに触ることでしか己を知覚できない。麻薬、僕たちは麻薬をするように自慰をする。僕の体は疲れているし、僕の心はすさんでいるし、僕の体は自慰を求めていた。僕たちは生きるという苦しみを、与えられる享楽で誤魔化すことでしか生きられないジャンキーなのだ。どうか、もし僕たちを救ってくれるというのなら、頬を打つのではなく優しさを与えてくれ。肌で貴方に触れさせてくれ。貴方が僕を拒まないというのなら僕は貴方をどれだけでも愛そう。貴方がもし僕を愛してくれるというのなら、どうか僕が貴方が私を愛さなくなったとしても愛して欲しい。僕たちは愛が一方的に与えられなければ生きられない憐れな人種なのだ。もし貴方が僕に愛されても良いというのなら、決して何をしても何も言わないでくれ。僕たちは愛を一方的に与えなければ満足できない憐れな人種なのだ。愛とは耐える事だ、僕は貴方に耐える事を要求する。貴方は僕に耐える事を要求してはいけない。愛とは不完全なものだ、決して等価でもなく平等でもなく定量でもなく法則性もない。僕たちを愛という名の劇薬でジャンキーにするには、僕たちをもう少しだってまともにするには、あなた達にもう少しの辛抱が必要なんです。無理だというのなら返してください、私の愛を。私は無関心な貴方に最大限の愛を注いで生きてきました。私は、貴方に知らぬところでひそやかな愛を施してきました。無理であるとか、したくないとかではないのです。愛とはただそこにあるものなのだと、貴方に知って欲しい。
 けれど僕たちはそれだけじゃ満足できずいつだって飢えているのだった。