そう


 謝りたいのです、私は、全てに。はねつけてきた優しい手に、それに唾を吐いた自分が許せないのです。けど、これも奇麗事で、きっと明日には私は平気で人を傷つけている。愚かな奴なのです。そのためにどうすればいいかはわからない。けれども、その手を、今度はしっかりと握りたい。握り返したい。
 なんとかしなくてはいけない。けれども、それは意思的にやればまた自分に破滅をもたらす。私は非常に愚かで、この世界で最も愚かで、愚か過ぎてどうしようもない奴だから。まず、間違いない。私は人並みのことさえできはしない、人に生かされることで生きている豚となんらかわりない。いや、豚だ。
 ねえ、豚は人の言葉を喋らないから生かされているのよ。だって、ねぇ、人の言葉を喋ったら、全部いっかしょにまとめてわっしゃわっしゃと潰されてその汚らしい腸に詰められてソーセージになってしてしまうわ。だって、気味が悪いもの。人間は豚とは交われないし、交わりたいとも思わないわ。そうね、どこかの漫画に出てくる異常性欲者の囚人なら、豚の精器にペニスを突っ込んで貴方の名前を呼ぶかもしれないけれど、ね。
 だから僕は豚から人になろうと考えてはいけないのだ。せいぜいトリュフを見つけられる程度に人の役に立てる豚になれば、まぁしばらくは殺されないだろう、この社会から。