「六休さん」


 二千九年九月十九日。京都金閣寺をジャックして行われた六休さん全国ライブツアーイン京都。京中・畿内の六休ファンに加え、西国は九州の大宰府、東国は鎌倉から集まった熱狂的六休ファンにより、会場の総人口は十九万人に到達。二十世紀後半から行っている彼のライブツアーで最大の観客動員数を記録した。この記録的な観客動員の裏には、いまや世代や国境を超え様々な人々に親しまれている、六休さんの楽曲が持つ音楽性の強さがある。
 午前七時五十九分。園内満員となり最前席に陣取った熱狂的な六休ファン達が池に落ち始めた頃、金閣寺のライトアップが突然消えた。と、共に、八時のライブ開始をカウントする時報が鳴り始る。一般的な他のライブと違い、六休ライブではファンはカウントダウンをしないのは有名である。彼らは八時を告げる長めの時報を静かに待ち、鳴るや間髪入れず一斉にこう叫ぶ。
「六休さーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!」
「Hey!」
 法衣色、紫に照らし出され煌く金閣寺の上に、スキンヘッドに金色の「けさ」を肩にかけた六休さんが現れた。挨拶もせぬまま、もはやライブ開始の定番曲となった代表曲、「Rock You SAAAN」の演奏が始った。
「Baby Baby Baby Baby Baby Baby 愛してる! Baby Baby Baby Baby Baby Baby Rock You SAN! 頭はからっきしだよ六級品! 札付きのろくでなしさ六級品! 屏風は破るぜ六級品! だけど喧嘩はまかせとけよ一級品! AH! AH! NA! MU! SAN! DAHHHH! Rock You! トンチンカンチン、トンチンカンチ、気にしねえ! 気にしねえ、気にしねえ、気にしねえ! MEIHUMADOUは果てしなく! ワカランチンドモ半殺し、トンチンカンチン、Rock You SAAAAN!  Baby Baby Baby Baby Baby Baby ! 愛してるぜ、オマエラ! Baby Baby Baby Baby Baby Baby Rock You SAN! Rock You SAN!」
 金閣寺内を駆け巡るファンの歓声。しかし、これはまだライブの始まりでしかない。紫のライトが一瞬暗転し白色光に切り替わると、金閣寺の屋根に立つ六休無純とSHIN↑MON、ドチテボウヤの姿がはっきりと現れた。
 その後ライブは定番の楽曲が続く。「AWATENAI、あわてない」「TAIHEN、六休DONO!――SHIN↑MONギターソロ」「Hassle・on・The・MAM」を熱唱した六休バンド。途中に挟んだフリートークでは、昨日フライデーにより六休さんとの密会が報道された、グラビアアイドルMI−YOについての話題がファンからあがった。六休さんはMI−YO本人を名指ししての発言はしなかったが、近々ファンに大切な報告があるとだけ告げた。今年で六十九歳になる六休さん。ロックと御仏に捧げたはずの純潔を、愛するに人に捧げる決心をしたのだろうか。はたして大切な発表が彼の還俗であるかどうかは分からないが、今後とも六休無純と六休バンドの動向に目が離せない日が続くだろう。