書評「ちりとてちん」


 読み出し、いきなり話の流れが速くて、『忙しくてあまり時間をかけれなかったのかなぁ』と思ったのですが、後半はそうでもなく。読み終わる頃にはすっかりと文章には馴れてました。文章の巧妙は判別つきませんが、ストーリーのツボは確実に抑えてらっしゃる。流石はプロのライターさんの書いたものだなぁと関心。ただ、もうちょっと冊数があれば、凝った演出のしかたもできたろうには悔やまれます。
 リアルタイムで追ってたのでストーリーはあらかた知ってたのですが、前半の部分はこれで初めて読みました。いや、B子はほんま不憫な子やのう……。友春や小草若兄さんが惚れるのも分かる、こういう不憫な子は守ってやらなってそんな気持ちになる。
 後はおかあちゃんの絡み。あぁ、なんかこれ俺も経験ある。というのも、うちの母ちゃんも昔文学目指してて、かの大阪にある蒼い炎が燻ってそうな学校におったんやとか。で、今は主婦。そりゃまぁ一時期酷いことを言ったさ、そんなちんたら書いてたらあかんて、もっと数かかなとか。今は口が裂けてもそんなこと言えんけど。(この二年間で書ききった小説→1 推敲待ち→2、未完成→3)
 反抗期を通すことで、父と母への偉大さっていうのは自分の中で一つ大きくなるんだなぁと、そういうテーマを俺はこの作品の中に感じます。いや、なかなかできんもんやで、ほんまに、お父ちゃんとおかあちゃんて。難しいよ。
 努力すればきっと報われる、辛くて辛くて逃げ出したくなる辛さの中を生き抜いて、ようやく自分の輝きを身に着けたB子の姿は、どこか憧れてしまう部分がある。サクセスストーリーは辛い時期があってこそ輝くんだなぁ。まぁ、某ツンデレの樺島クンみたいに人間は放置プレイから抜け出せないのかもしれないけれど、それでもやっぱりこういうのは胸がすく。
 努力はいつか実を結ぶ。頑張って生きていれば、悩みも辛さも、何もかも自分の模様になって、いつかきっとなりたい自分になれる。文中の言葉とは厳密には(かなり)違いますが、勇気付けられました。オススメです。一度本で、できればドラマで見てみてください。