市民権

 なにが市民権って、市民ケーンと市民権をかけただけなのだが、もう一つ見たスターシップトゥルーパーズ2の市民権とも絡んでいたりして。まぁまぁ、2はシリーズ物の定石よろしく駄作B級でしたとさ。端的に言うなら、設定だけ借りてきて後はその中でアメリカンパニックムービー。設定違うだけのエイリアンもしくはプレデターみたいなもんですよ。そもそも、1はあのケレン味溢れるギミックやら設定やらを所狭しと配置して面白かった訳であり、その設定をそのまんま持って来てさぁ面白いだろうとは流石に如何かと。人間に寄生するエイリアンなんてネタも随分前から在る様な無い様なだし、当時はそういうのが無かったのだと言うのなら楽しめたかもだが、色々と失敗してる感は否めない。この調子で3やったら間違いなくこけるんでないの。いや、見るけど。だって、自分でB級映画大好きとか言っちゃってるんだもの監督達がメイキングで。SF物としてみるならあれかも知れんけど、エイリアン系シリーズ物としてみるなら別におkk。いやもうちょっと端役に動きが欲しいかも主人公ばっか映しすぎ。あと、エイリアン系にシフトしたら立ち位置的に、RPG的に「ワイルドアームズ」のポジションっぽい。

 まぁそんな今年のグラミー賞もこいつの3とスピードレーサーで決まっちゃったかなぁ、なんて作品の事はどうでもよくって、本題は市民ケーン。よかった、なにがよかったのかわかんなかったけどとりあえずよかった。いや、こう言うとなんだいお前もアレか名画とか周りの評価に屈するのかとかそういう風にとられるかもだがそうじゃない。なんつうか、「なにこれ、わざと白黒で撮ってるんじゃないの」ってくらい凄く新鮮な感じがしたわけよ、なぜだか。日本語吹き替えの声優の腕がよかっただけかもしれないけど、現代映画と遜色が無いと言うか遜色が生じただけと言うか、とにかく阿呆な俺でも普通に見れた。
 話としてはある富豪の死に関するニュースを作ろうとしている一団が、「薔薇のつぼみ」という富豪が残した最後の言葉の真相を知ろうと彼の周辺人物に話を聞きに行き、その過程で富豪の破天荒な一生を知っていくというまぁ伝記物染みたものなのだが。まずはこの富豪である男が面白い。親の遺産で一生遊んで暮らせるだけの金を持っていた彼は、なぜだが赤字ばかり出す新聞社の社長となり、世に知らぬ人の無い大スターになろうとする訳だ。なんでそんな事をするかというと、彼の親しいもの達曰く人々に愛されたかったからであり。だがその愛を与えなかった為に彼は孤独だったとも言う。実際、彼は自分がしたい様にするだけで、愛して欲しい人間の感情だのしたいことまでには思慮が及ばなかった。それで押し付けがましい愛や彼の高い自尊心によって、親友を、恋人を次々と失っていき、最後には誰からも見放されて屋敷の中で「薔薇のつぼみ」と呟いて死んでしまうのだ。
 そんな人生を見聞きした記者は、最後には富豪がつぶやいた薔薇のつぼみに対して、「そんな一言で彼の人生は片付けられるものなんかじゃない。薔薇のつぼみは、彼がこれまでの人生で(友人や恋人の様に)無くしてしまったものなのだよ」と、結論付ける。ところがどっこい、薔薇のつぼみとは彼が幼少の頃遊んでいたソリに彫られていた言葉であり、そのソリは記者たちの手によって価値の無いものとして炎の中に放り込まれるというオチ。
 んでまぁそのラストが何を言いたいのかと、俺は足りない頭でうんうん悩んでいた訳なのだが。実際記者の言うとおり彼の人生はそんな一言で表されるものではなかったというのには同意で、そのソリ自体には意味が無いんじゃないかなと思うわけだ。それで、そのソリが何故彼の頭の中に浮かんだのかというは、彼が昔に欲しかったもの持っていたものの現われなのだと思う。冒頭で、スノーボールを握りながら死んでいるのだが、その中に無くなってしまったソリを見ていたのだと思う。それと合わせて、最後にソリが大量の骨董品の中から出てきたという事を考えると、彼はあらゆるものを蒐集する様に、あらゆる人を蒐集し、そしてそれから愛されようとしたのだが、集めたものの中から必要なそれを見つけ出す事が敵わなかったという事が言いたいのだと思う。そうして、持ちながらにして失っていったという事なのだろう。よくいう、本当に大切なものを見つけられないみたいなそんな事が言いたいんじゃないのかなぁと思った訳だ。それだけ聞くとなんだかしょうもない感じではあるが、しかしそこに答えがあると思ってかき集めたのに結局その中から見つける事をしようとしないで死んでしまうというのはこの上なく寂しいような苦しいような。やっぱり人間の生き方というのはシンプルなほうが良いという事をこの監督は伝えたいのだろうかな。いや、さすがにそれは無いか。
 とにかく、良い映画でしたよこれ、オススメ。